不思議な毎日~人生迷走中?

私の人生で起こった不思議なこと~不思議・雑記

第71話 恩師からのメッセージ

今回のお話は第71話「恩師からのメッセージ」です。

 

私は現在数学の講師をしていますが、尊敬する恩師がいました。残念ながら今年の10月に旅立たれました。恩師が生前私に語っておられたことを書きたいと思います。

 

私の数学の恩師A先生と知り合ったのは、中学1年生のときでした。私はその頃から数学が好きでしたので、授業を楽しみにしていました。その時の数学担当がA先生でした。先生は破天荒な人で、私と全く真逆のタイプの人でした。ただ、何故か気が合ったのです。先生は学校の教員になられたばかりで、私たちは初めての教え子でした。

 

A先生は気分屋な一面があり、生徒の評判もバラバラでした。ただ、教え方には定評がありました。私も先生のように数学ができるようになりたいと心から思っていました。私の学校は中高一貫校で、先生には高校1年まで習いました。あっという間に6年が過ぎましたが、先生とは卒業後も交流がありました。そして私に必ず元旦に年賀状をくださいました。私が一番弟子だったのかもしれません。

 

私が中学の臨時教員をしている時に、あまりうまくいかないので相談にのってもらうことにしました。市内の某有名デパートの角で待っているように指示され、その後居酒屋で食事をしながら話しました。

 

「これ食べてくれる。俺は偏食がひどいんや」そういわれて頼んだおかずを私の皿に次々と入れていかれたのを覚えています。「今日は時間がない。話をはよしようや。」

「何か大事な用事でもあるのですか?」と聞き返したところ、「今からテレビでバレーボールの試合があるんや。はよ帰ってバレーを見たいんや」私は呆気にとられました。「僕との食事とテレビのバレー中継、どちらが大事なんですか?」と聞き返そうと思いましたが、やめておきました。

 

それからA先生の真剣な話が始まりました。「俺はな、お前の実力をかっている。俺の予想ではな、いずれお前と働きたいと言ってくる人間がおると思っている。多分教える仕事や。お前が不器用なのは、よく分かっている。でもな、お前が真剣に教える姿をみせると生徒は必ずついてくるで。俺はそう思う。それがいつのことになるか分からん。でもな、そのために今から準備をしとけ。数学のことは何を聞かれても分かるようにな。一つだけ注意点を述べておく。本代はけちるな。本代をけちるような奴は伸びん。」

 

A先生と直接お会いしたのはそれが最後だったような気がします。私はその後、一旦教える仕事から退きました。ところが、先生の予言通りのことが起こりました。その食事から約14年後のことでした。知人から紹介してもらったパソコン教室で数学を教えてもらえませんか、と言われたのです。

 

昨年の4月のことでした。訪ねていったパソコン教室で経営者の方から「突然こんなことを言って驚かれるかもしれませんが、うちで塾をやってみようと思います。ただ、数学をはじめ理系の科目ができる人がいません。是非、うちで働いてもらえませんか?」

 

A先生の予言は的中しました。先生にいずれは報告しなければならないと思っていました。ところが、毎年来ていた年賀状が突然今年の元旦から途絶えてしまったのです。

そして10月に先生は他界され、私は11月にそのことを知りました。

 

A先生は私に一流の教え手になることを期待されていたと思います。私が先生へ恩返しができるとすれば、それは先生を超える教え手になることだと思います。末筆ながらA先生のご冥福をお祈りいたします。