不思議な毎日~人生迷走中?

私の人生で起こった不思議なこと~不思議・雑記

第26話 掲示板の1枚の貼り紙と別れ

中学・高校時代に歴史・日本史を習った先生が大学に入ったら必ず掲示板を隅々まで見るようにと言われてました。私のその後の進路を変えた掲示板の1枚の貼り紙のお話です。

 

私は福岡市にある大学の生物学科に入学しました。実は不本意入学で本当は数学科に進みたかったのです。大学入学当時の担任の先生はドイツ語の教授でしたが、私は何度か学科を変わることは出来ないかその教授に相談に行っていました。(私の大学は面白いシステムを採っており、入学当初は全く専門外の教員が担任になることが多かったのです。他大学で同じシステムのところがあるかは不明です。)そのドイツ語の教授は私と共に大学の事務室にかけあって下さったのですが、事務室は全く受け付けないといった感じでした。大学の教授というと面倒見がいい人があまり多くないのですが、この教授は例外で大変面倒見がいい方で相談にもよくのって下さいました。

 

私は数学科に移ることは半ば諦めていました。大学の中庭を散歩していたある時、掲示板の隅っこに1枚の貼り紙を見つけたのです。「数学科編入生募集」という貼り紙でした。私は一瞬目を疑いましたが、ここに書いてある条件を満たしているのだろうか、ともう一度よく見直したのです。「間違いなく満たしている、よし試験を受けよう!」と決意しました。慌てて先ほどのドイツ語の教授の所に行ったのです。「この前、一緒に事務室に行って無理だと言われたのではないですか?」と言われたので、私は中庭の掲示板の貼り紙の話をしたのです。「それはチャンスじゃないですか。私も必要な書類があれば書きますので、是非受けてみなさい。」

 

私はすぐ事務室に向かいました。「ああ、あれは数学科の方から頼まれたので貼っておきました。」素っ気ない返事でした。「以前問い合わせたのだから、電話の1本くらいくれればよかったのに」と内心思ったのですが、言わずに留めました。

 

試験は約3か月後、真夏の暑い時季8月です。正直時間がありません。私は起きている間は、朝から晩まで数学の本を読んで試験に必要なことを身に着けました。

 

この頃、私には気がかりなことが1つありました。愛犬ハナコの体調がよくなかったのです。外で飼っていたのですが、暑い時季でもあったので玄関先に入れて扇風機をかけながらその傍で数学の勉強をすることもありました。試験は大学の夏休み中に行われたため、福岡を離れ、広島の実家で勉強したのです。

 

いざ、試験日。試験は数学と面接のみ。午前中数学の筆記試験を終えました。「出来は3分の2位かな。」午後は面接でしたが、簡単な志望動機を聞かれた後は数学の口頭試問でした。「面接まで数学なの?」と思いましたが、無事終了。「通るか落ちるかは正直分からないな。」

 

試験を終え、その日に大学のある福岡から広島へ新幹線で戻りました。もちろん、ハナコの様子が気に掛かっていました。ハナコが生きている姿を見て安心しました。ところが、その翌日の朝、ハナコは旅立ってしまったのです。私が試験を無事終えるのを待ってくれたようです。本当に飼い主思いの犬でした。

 

それから10日後、無事試験に受かっていました。晴れて希望の数学科へ移ることが出来ました。ドイツ語の教授にお礼を言いに行くと、大変喜んでくださいました。今、思い出してもその募集の貼り紙は見逃しかねない位置に掲示してありました。実際に数学科に編入した人達で学内の人は私1人のみで、後は全く違う大学などの出身の人達でした。あの貼り紙を見逃していると今の自分の進路は違っていたのかもしれません。