不思議な毎日~人生迷走中?

私の人生で起こった不思議なこと~不思議・雑記

第74話 盲目の数学者

今回のお話は第74話「盲目の数学者」です。私は、大学時代に目の不自由な方と卓球をしたことがあります。する前は勝てるものだと思っていました。また、その後この方と意外なところで再会したのです。

 

私が通っていた大学では、体育の授業はコース選択制でした。1年次と2年次の前期は必須でしたが、選択するスポーツは自由でした。ですが、スポーツ全般が不得手であった私はどうすべきか随分悩みました。そこで「保健コース」というコースを選択したのです。そのコースは本来身体に障害がある人のためのコースで、1年生2年生、専攻学科を問わず全て同じ授業を受けましたが、私はそのコースを担当していたH助教授(今でいうところの准教授)の許可を得て身体に障害のない私も特別にそのコースを選択することができました。

 

そのコースでは、バトミントン、フリスビー、アーチェリー、ゴルフの打ちっぱなし、ビリヤード、ゲートボール、ボーリング、卓球などのスポーツを行いました。身体に障害を抱えながらも懸命にスポーツを行う学生に混じってスポーツを行いました。

 

ある時間に卓球を行ったのですが、1年生であった私は、2年生の盲目のIさんという男子学生と対戦することになったのです。H助教授から「簡単に考えちゃいかんよ。多分ね、あなたが負けると思うよ」と言われました。

 

Iさんは対戦前に「私は目が見えませんが、かろうじて目の端で光を感じることはできます。手加減しませんのでどうぞ宜しくお願いします。」と言われました。Iさんとの卓球は普通の卓球とは違い、光る球をテーブル上で転がすというものでした。

 

私とIさんとの対戦が始まりました。結果は私の惨敗。何対何かは忘れましたが、私は3点だったと思います。運動量も予想以上に激しいものでした。H助教授は、「目が見えないと他の感覚器官は研ぎ澄まされる。だから、それ以外の感覚は普通の人以上のものがあるからとても適わないんだよ。僕だってI君に負けてしまうよ。」

 

Iさんとの対戦はその1回だけだったと思います。その体育の授業の後はIさんと会う機会はもうないと思っていました。ところが、ある場所で再会することになるのです。勘の良い方はお気づきだと思われます。

 

前話でもお話したようにその後、私は生物学科から数学科に移りました。4年次になると数学科では大学院生と一緒に講義を受講する機会があります。

 

数学科のある科目の授業の時間のこと。科目名は忘れましたが、その講義は大学院生と一緒に受講する講義でした。私は椅子に座って講義が開始されるのを待っていました。すると、周りを何人かの学生に囲まれながら、視覚障碍者用のスティックを手に持ち、サングラスをかけた学生が教室に入ってきました。私はその時、一緒に昔卓球をしたIさんだと分かりました。「まさか、数学科の方だったとは…」私が数学科の4年生の学生だったその時、Iさんは数学科の大学院生だったのです。

 

体育の授業で「保健コース」を受講した学生は学年も1年生、2年生混ざっており、お互いが何の分野を専攻する学生かは知りませんでした。かろうじて学年だけは1年生か2年生か分かっていました。ですから、まさかIさんが数学を専攻している方だとは分かりませんでした。

 

Iさんがその後、どうされているか分かりません。おそらく日本のどこかで数学を活かす仕事をされているのではないかと思い、タイトルを「盲目の数学者」とさせて頂きました。何らかの形でIさんが数学を楽しんでいらっしゃる姿が拝見できたらと思います。