第58話 バス停での出来事

私は週に2回、市内の中心部にある治療院にバスに乗って通っています。ある日、いつものようにバス停で待っていました。そのバス停はバスの車庫の前にあります。そしてバスが到着したのですが、あまり乗る気がせず、次のバスを待つことにしたのです。すると一人の年配の女性がこちらに駆け寄って来られました。そしてバスを待っている私に話かけてこられました。「今からバスに乗られるのですか？実はこの切符は期限が明日までで私は乗る機会がありません。使って頂きたいのですが。」私は事態が良く呑み込めないまま切符を受け取りました。正直、何かお礼をすべきかどうか迷ったのですが、相手の方もそのつもりはない様子だったので、お礼の言葉を述べてその後に来たバスに乗り込みました。

バスの中で疑うわけではないのですが、もう一度切符を見直しました。確かに明日までの切符ですし、きちんとしたものであることは分かりました。しかし、バスを降りる際、運転手さんから何かを言われやしないか（本当にあなたのものですか？といった内容）、気にはなりました。私はバスの中で到着した後、近くの神社にこの額を奉納すればその方へのお礼になるのではないかと考えました。そしてバスが到着し、降りたのです。

バスの到着後、近くの神社にその額200円を納め、治療院に向かいました。大変いい出来事だったので、治療院に行き、その話をしました。

もし、私だったらどうしてたでしょう？自分か家族が使わなければ、破棄していたと思います。私は見知らぬ人に渡す勇気はないような気がするのです。この方の勇気に大変感謝をしたいと思います。